転機を生かす

配置転換、昇進、転職、役職定年等、キャリア上の大きな変化をどう乗り越えるか?
この様な”転機”をどう捉えるかによってその人の自己成長に大きく影響します。今回はそのキャリア理論の1つ、シュロスバーグの4Sモデルについてのお話です。

IT業界で働く皆さんの中には、
-基幹システムの運用保守の仕事からDXを推進する部門へ異動になった
-ソフトウェア開発の現場から離れた管理職へ昇進した
-役職定年を迎え現場の仕事に戻るのことに苦労している
こうしたキャリア上の”転機”に直面し、不安や葛藤を抱えている方もいると思います。

技術革新のスピードが驚異的な速さとなり学ぶべきことが多い中、業務内容の変化は大きな負担になってしまうこともあります。この様な転機を迎えられた方にとって有益なキャリア理論が「シュロスバーグの4Sモデル」と呼ばれる理論です。

この理論の生みの親であるナンシー・K・シュロスバーグ氏は米国メリーランド大学でカウンセラー教育を行い、全米キャリア開発協会の会長も勤められました。1929年生まれの彼女が生み出した理論は「ナンシー・K・シュロスバーグの理論」として広く知られています。

この理論とモデルを活用することで現状を冷静に分析でき、新たなキャリアに向けて自信を持って再出発できる手助けになるかも知れません。

シュロスバーグの4Sモデル

この理論は転職、結婚、離別といった人生のさまざまな出来事を「転機(トランジション)」と呼び、それらを乗り越えるための方法を体系的に解説しています。

背景にある考え方は、転機を努力によって乗り越える過程で、個人の成長と共にキャリアが形成されていく、というものです。

また、転機を乗り越える際には自分が持っているリソース(資源)

Situation(状況)
Self(自己)
Support(支援)
Strategies(戦略)

を点検すべきと説いており、この4つの頭文字をとって「4Sモデル」と呼ばれています。

転機を乗り越えるための3ステップ

それでは具体的に転機を乗り越えるための方法を3ステップで説明します。

1.まず転機のタイプを見定める

転機を乗り越えるためには、今直面している転機がどのようなタイプのものなのかを客観的に把握することです。
転機には「イベント」と「ノンイベント」の2種類に大きく分け、さらにイベントをさらに2つに分類し、以下の3種類の転機を定義しています。

イベントとは、①予期したとおり起こったこと、と②予期していないのに起こったことです。一方のノンイベントは、③予期したのに起こらなかったことを指します。まずはこうした転機のタイプを明らかにすることがスタートラインです。

①予期していた転機とは「ある程度自分で選択することができた転機」をいいます。

たとえば、希望した配置転換、転職、役職定年等がこれにあたります。自分がコントロールできる範囲で起きた転機であり、不安などはあっても「転機が訪れたこと自体に対する驚き」は生じません。

②予期していなかった転機とは「予期していた転機」と対比されるものです。

こちらは自分ではコントロールできない転機です。例えば、突然子会社へ出向を命じられた、会社が何の前触れもなく希望退職を迫ってきた、さらには天災・事故に巻き込まれた場合などが、この「予期していなかった転機」にあたります。

この様な転機では、なぜ自分が?といった大きな動揺が伴います。それを受け入れるにはそれ相応の時間も必要です。

③期待していたことが起きなかったという転機は「きっとこういうことが起きるだろう!」と期待していたにも関わらず、その出来事が起きないことがです。

たとえば、「今年はプロジェクトマネージャーとして昇進すると思っていたのに何の辞令もない」「希望していたDX部門へ異動になると上司から言われていたが叶わなかった」などの例がこれにあたるでしょう。

この様にイベントだけではなく、ノンイベントも「転機」と捉えることがポイントです。期待していなかったことが起こっても、期待していることが起こらなくても、結果的に変化をもたらすチャンスと考えます。

これは自分とっての転機(トランジッション)であると認識すること、そして3種類ある転機のどれに該当するのかを理解することがまず重要です。

転機に見舞われた場合、自分になにが起きたのかを理解し、どんな変化が自分に起きそうなのかをイメージします。

「その転機によって生活はどう変わるのか」
「その転機によって自分の役割はどんなものになるのか」
「どの転機によって人間関係はどう変わるのか」
を考えることになります。

そのうえで、自分が今、転機の「始まり」「最中」「終わり」のどこにいるのかを考えます。「始まり」は喪失感を覚えて否認している状態、「最中」は空虚を感じて混乱している状態、「終わり」は嘆きつつ受容している状態です。こうして転機の状況と自分の感情を客観的に把握することで、冷静に次の行動を決められるようになります。

そして、そういった変化をプラスにし、転機を乗り越えるために、次の「リソースの点検」が重要になります。

2.「4S」のリソースを点検・整理する

自分が現時点でどのような強みやスキル・人脈を持っているのかを整理し「転機との向き合い方」を明らかにするフェーズです。
ここでは自分の持っているであろう4つのリソース(状況・自己・支援・戦略)を点検することです。
自分が使えるリソースを入念に整理し、逆に足りないものを見極めることで、転機の最適な乗り越え方を考えることができるのです。

(1)状況(Situation)

その転機が自分にとってどんな意味を持つのかを判断することです。
-原因:どのようなことが選択が引き金になって起こったイベントなのか
-予期:社会や周囲の状況から予期できるイベントだったのか
-期間:イベントは一時的なものなのか、しばらく続くものなのか
-経験:過去に同じようなイベントを経験したことがあるか、その時の感情や状態はどうか
-ストレス:現在のイベント以外で抱えているストレスがあるか
-認知:この状況をどのように受け止めているのか(好機なのか、危機なのか)

(2)自己(Self)

訪れた転機を理解し乗り越えるために自分の感情の動きを理解することです。
-仕事の重要性:今の仕事をどれくらい重視しているか。職位や給与等どこに高い関心があるか
-仕事と他のバランス:仕事、家庭、趣味、地域社会のバランスをどう考えるか
-変化への対応:変化にどう向き合いたいのか(受容するのか、抵抗するのか)
-自信:自分に対する自信があるか。新たな挑戦をする気概はあるか
-人生の意義:自分の人生に対してどのような意義を感じているのか

(3)支援(Support)

「人からの手助け」は転機を乗り越えるための力になりえます。ビジネスで関わりのある人物や、第三者などからの支援は期待できるか。
-人間関係:友人や家族から必要な援助を受けられるか
-励まし:自分の挑戦や成功を期待励ましてくれる人はいるか
-情報:仕事や企業、転職市場、雇用などに関する情報を提供してくれる人はいるか
-照会:失職した際の経済的な支援制度についての知識や情報提供者はいるか
-キーパーソン:自分にとって重要な情報を提供してくれる人物はいるか
-実質的な援助:経済的な支援が望めるか

(4)戦略(Strategies)

これは、状況・自分自身・支援を確認・分析した後に講じるものです。その転機を乗り越えるために有効な手段は何なのかを考えていくこと。
-状況を変える対応:仕事探しや、新たなスキルの習得に向けたトレーニングを進めているか
-認知を変える対応:転機の持つ意味をプラス思考に変えようとしているか
-ストレスを解消する対応:運動やリラクゼーションなどを通じてストレスを解消しているか

3.転機を受け止め、行動する

自分が使えるリソースを整理したあとは、転機を受け止めたうえで実際の行動に移します。

希望退職を例に挙げれば、「転機に抗うため、今の会社にとどまれるよう人事に相談してみる」「逆に転機を受容し、知人を頼って転職先を探す」など、人によって選択はさまざまです。

4Sのなかに不足しているリソースがあれば、補う努力も欠かせません。

このように、冷静に自己分析してから転機に向き合うことで、有意義な意思決定ができるようになります。

転機をチャンスに変えるために、本稿が一助となれば幸いです。

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