先日、陸上自衛隊の実弾射撃訓練中に3人の自衛官が死傷するというたいへん衝撃的な事件がありました。発砲したのは今年4月に採用されたばかりの18歳の自衛官訓練生でした。
被告となった18歳の訓練生は50歳台の上官を狙って撃ったという供述をしており、上官に対する何らかの不満や怨みがあったと推測されています。
そもそも人を殺傷するための武器を扱う自衛官が、上官に叱られたり注意されたことで自制心を失ってしまうことは危険極まりないことです。
自分の感情をコントロールできない、いわゆるすぐに「キレる」人物が武器を持ってはいけません。採用時にそれを見抜ければよいのですが1~2度の面接試験だけではなかなか難しい面もありそうです。自衛官になりたい人が減少している中、採用基準も緩和されていることも影響している可能性もあります。
その様な背景からも自衛官の教育では実弾を使った訓練に入る前までに自分の感情をコントロールする訓練をしなければならないと感じます。
自衛官の訓練カリキュラムの中に既にそういう類の訓練があって、まずは頭で理解しそれを実践して身に着けるという様な訓練があると信じたいです。
前置きが長くなりましたが、今日は「感情の取り扱い」についてのお話です。
自衛官の事件は極端な例ではありますが、皆さんの日常生活の中でもふとした他人の行動にイライラしたり、上司から注意された時に怒りがこみ上げたりすることはよくあるのでしょうないでしょうか。
その様な時に自分の感情をどうコントロールしたらよいか、どう取り扱うと良いのかということがテーマです。
感情には強弱がある
一言で「怒り」を感じている、と言っても激情的な怒りで声を上げて怒鳴りたい時もありますし、車の運転でちょっと割り込みされてイラっとした怒りもありるでしょう。ちょっとイラっとしただけなのに、割り込みされた車に突進していってしまうのは明らかにアンバランスな反応です。
逆に上司と部下の関係だからと言って、度々不条理な𠮟り方をする上司に、ただ言われるがままに攻撃されていたらメンタルがおかしくなってしまうでしょう。不条理だと感じたらそれに対応した怒りや嫌悪の感情を抱き、反論するなり誰かに相談するなりするのが正常な反応です。
バランスが取れた行動をするためにも、まずはその感情の強度にあった感じ方受け止め方をすることが大切だと言うことですね。
感情は人が生きていく上ではなくてはならないもの
怒りや悲しみ等のマイナス感情は無い方が良いと思ってしまいますが、人間が生存していく、生きていく上では非常に重要なものです。湧き起こる感情には人間にとって意味があるということです。例えば以下の様なことです。
怖い→これは逃げたほうが良い。逃げられないなら対決すべし
怒り→なにくそ!というモチベーションに繋がることもある
悲しい→他者の気持ちが判るようになる
嫌悪→避けたほうがよい、スルーすべき
今自分が感じている感情の記録
次に重要なのは自分が感じている感情について客観視して分析できる能力を養うことです。自分を俯瞰してみることです。
・どんな事象に対して
・どんな思考をしたか
・そしてどんな感情が沸いて、その強弱はどの程度か
・体はどんな反応をしていて
・どんな反射行動をとったのか
これを実際の事例に当てはめると
事象:自分の作った資料を上司から「よく判らない」と頭ごなしに注意された
思考:自分がどんだけ努力と時間を掛けてやったか全く分かっていないくせに
文句を言うだけなら誰にでもできる
上司らしい包容力と的確なアドバイスもできないのか
感情:怒り、嫌気、レベル:Max
身体:冷や汗が出ている、手が震えているようだ
行動:トイレに籠って出てこれない
この様に整理し自分を俯瞰してみると、苦しい状況から少し距離を置けるようになります。
そしてもう1つ大事なのは「事象」と「思考」とを切り離すことです。
強度が高い感情が湧き起こると、人は「事象」と「思考」がごちゃ混ぜになった状態を味わいます。例えば、素晴らしい映画を見た時の感情の高まりの取り扱いはそれでよいのですが、マイナス感情の時にはこれが厄介で混乱をきたします。
ある「事象=事実」をどう「考えたか/感じたか」は、人によって違いがあります。同じ「事象」でも負のスパイラルに入り込んでしまった人の思考は極端にマイナス思考になってしまいます。
そこまで落ち込む必要が無い「事象」かどうかを客観的に自分で分析できるようにするためには意識的に「事象」と「思考」を切り離しましょう。
それが第1歩です。
そもそも感情にはどんなものがある?
米国の心理学者であるポール・エクマン博士(Paul Ekman、1934年ー)の研究結果では、人類には普遍的な5つの感情があることを発表しました。
喜び:Enjoyment
嫌悪:Disgust
悲しみ:Sadness
怒り:Anger
恐れ(恐怖):Fear
驚きを入れて6つとすることもありますが、今日は5つに限定します。
これをさらに細分化して強度順にならべた46種類の感情があるとしています。
喜び:Enjoyment(強度の低い順)
1.感覚的快楽
2.喜び
3.同情
4.面白い
5.シャーデンフロイデ:人の不幸を喜ぶ感情(正常なもの)
6.安心
7.平穏
8.高慢:自分や仲間の成果から得た深い喜び
9.フィエロ:困難な挑戦を乗り越えた時の喜びや達成感
10.ナチェス:自分の子供や教え子が成長した時の誇らしい喜び
11.驚嘆:大きな驚きを伴った信じがたい経験からの喜び
12.興奮:感情の高まりもある
13.狂喜乱舞:感情の発露、留めておけない大きな感情
嫌悪:Disgust(強度の低い順)
1.苦手
2.嫌い
3.嫌悪
4.嫌気
5.反感
6.憎悪
7.強い嫌悪
悲しみ:Sadness(強度の低い順)
1.残念(期待が満たされていない感情)
2.挫折(失敗を繰り返しできないと感じる信念)
3.逸脱
4.諦め
5.無力感
6.落胆
7.悲惨
8.絶望
9.悲哀
10.悲嘆
11.苦悩
怒り:Anger(強度の低い順)
1.苛立ち(ちょっとした迷惑や不便さに対する軽い怒り)
2.フラストレーション(欲求が満たされない時の苛立ち)
3.腹立たしい・激高(繰り返されるか強い迷惑によって引き起こされる怒り)
4.論争性(違う意見に対して犯行する気持ち)
5.怨み(不当/不条理な扱いを受けた時の怒り)
6.執念(傷つけられたことに対して復讐したいと考える欲望)
7.憤激(制御できない暴力的な怒り)
恐怖:Fear(強度の低い順)
1.狼狽(不意な危険を予期してろたえる)
2.緊張感(危険があるかどうか判らない不確実な感情)
3.不安(訪れるかも知れない脅威への恐れ)
4.恐れ(重大な危機を予期した感情)
5自暴自棄(危険を避けることができないやけくそな感情)
6.パニック(自分を制御できない突然の恐怖)
7戦慄(ホラー、嫌悪感とショックの混在)
8.震撼(激しい恐怖、強いショックで震え上がる)
まとめです
・もやもやした感情は放置しないで、今自分が感じている感情はどんなものなのか具体的に言葉にしてみること。
・言葉にすることで客観視できるようになり、その感情と距離が置けるようになります。
・そして、物事に対する自分の考え方や感じ方の「くせ」や「傾向」を捉えます。言葉を変えると「思い込み」の傾向が判るようになればしめたものです。
・それが判るようになれば、今こんな状況に直面して、こんな感情を抱いているが、それはどんな「思い込み」によって起こっているのか。もっと他の可能性は考えられないか、といった柔軟性を持った考え方ができるようになります。
今日はここまでにします。お付き合い頂きありがとうございました。
〆
コメント